見えざる糸

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もう5月になった。桜黎町の大桜に続き、町に咲く桜の花が散り、緑色の葉を付けている。 そんな中、雑事堂では圭たちがいつも通りの毎日を過ごしている。書類の整理や本棚の手入れをしていた圭はふと、渉がソファーで何かをしているのを見かける。 「渉、何をやっているんだ?」 「ん?ああ、ちょっとこれをな」 渉がそれを圭に見せる。どうやら裁縫をしているようだ。渉は実は料理や裁縫などが得意なのだ。それ以外にも様々なことに挑戦して、よく手には絆創膏が目立つ。 「相変わらず裁縫上手いな……。もしかしたら廉より上かもしれないな」 「いやいや、これもモテるためだからな……!まだまだ上手くならないと」 渉が笑いながら言う。そう、彼はモテるために様々なことに挑戦するのだ。しかし効果は無く、退魔士になってから何故か妖怪に好かれる。 「ま、焦らなくてもそれだけの趣味があれば好きになってくれる女性も出てくるさ」 「そうなりゃいいがな……。あ、そういや圭は”花木屋”には行ったことあるのか?」 「花木屋?確か商店街の方にある花屋だったか?いいや、無いな」 そうかそうか、と渉は笑みを浮かべると、 「あそこはいいところだぜ~。まあ品ぞろえもそうだが何しろ……」 「こいつの意中の女子の家でもあるからな」 本棚の整理をしていた蒼也が顔を出すと言った。すると渉は、 「蒼也、お前!」「ゾッコンなんだろ?」 「……まあ、確かにそうだが」 照れながら言う渉にほれ見ろという顔で蒼也は言うと、 「でもこいつが惚れるのも納得の人だ。少なくともうちの2人とは大違いだからな」 蒼也が言うと隣の部屋から本を落とす音2回が聞こえた。蒼也はそれを無視すると、 「しかし、大丈夫なのか渉?前行った時は色々あったとはいえ散々だっただろ」 「うっ、確かにそうかもしれんが……、とにかくもう1回行くしかないだろ!」 そう言うと彼は立ち上がり圭を見ると、 「よし、今から会いに行くぞ!圭、お前もついてこい!蒼也ももちろん来るよな!」 「待て、だから何故俺もなんだ」 「蒼也は1度行った仲だろ。……俺と行くのは嫌なのか?」 「いや、まあ、そう言うわけではないが……」 相変わらずのクーデレだなと圭は呟くと、 「く、クーデレではない!何回言えば 「まあ蒼也はともかく、早く行こうぜ!」話を聞け!」 「……お前ら仲いいな」 圭はそう言ってため息をついた。
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