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ギリリ……と背後でまた音がした。
TAKUMIの長い脚が曲げられ、
あたしの腰を囲うように動く。
「っ、あ……」
TAKUMIはあたしを抱きしめたまま、
またソファーに沈んでいく。
支えを失って、あたしも
彼の上に倒れ込んでしまった。
起き上がろうとした
あたしのうなじをひと撫でし、
TAKUMIは下から口づけてくる。
逃げ出さなくちゃ。
逃げ出すべきだって、
そう思うのに。
こっそりと、それでいて堂々と
外されていくシャツのボタンに、
気が付いているのに。
……判っているのに、溶けそうで。
身体を滑っていく快感なんかじゃない。
あたしは、自分の奥底から
湧き上がってくる、
今すぐ泣き出したいような気持ちに
意識がとろかされていくのを
感じていた。
それは、
9年前に置き去りにされた
17歳のあたしと、
そんなあたしと一心同体で
生きてた恋心。
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