いち

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「俺と付き合ってください!」 「……え?」 んん?何々?聞き間違いかな? ――それは確か、高校に入学して数週間が経った頃のことでした。 三上杏那15歳、人生で初めて告白される、の巻。 時は放課後、場所は別棟の人通りの少ない廊下。 私は靴箱に入っていた無記名の手紙を見てここに来た……のだが、待っていた人は私の想像していた人物とはまるっきり違っていた。待っていたのが男子だったのは初めてのことだった。 女子に呼び出されることは、日常茶飯事とまでは言えないがよくあることだった。別に、『私と付き合ってキャピルンッ』みたいな百合的キャッキャウフフな展開ではない。むしろその方が精神的に楽だったかもしれない。女の怖さ全開なドロッドロ(相手だけ)な展開である。 彼女たちの主張を簡単に纏めればこうだ。 『私の好きな人に付きまとうなこの売女!』 さあてなんのことだか(すっとぼけ) 一貫してこの態度で対応するのだが、そうすると彼女たちは必ずブチ切れるので私はただ逃げるのみである。君たちカルシウム足りてないぜ!牛乳飲もうな! 「どう……かな」 おっとまだ何も言い返していなかった。 ものすごく緊張した面持ちな彼は、しかし私からすれば知らない人だった。 容姿に関しては主観が入るので省略するが、まあ人は好さそうな印象である。 ――ところで、私はこと恋愛なるものに疎い。 そりゃあ15歳の乙女、華のJKですからぁ?憧れはありますけどぅ? だからと言って誰かを好きになるなんてことはほとんどなく。友達との会話でこの手の話題が出たときは専ら聞き役である。 でも、好きでもない人と付き合うのはちょっと人間的にどうか、という考えなので。 返事はただ一つ。 腰を45度曲げて頭を下げ、言う。 「お友達からお願いします」
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