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…それに気づき、胸がきゅうっと、切なくなる。
「あゆむく…。」
「………ぃ…。」
「へ…?」
聞き取れないほどか細く小さな、声。
すべては聞き取れず、反射的にマヌケな声で、聞き返していた。
「…あゆむ君…?」
…手を置いていた、肩の震えが止まり、内心ほっと…安堵する。
そのスキに俯いたままのあゆむ君の顔が上がり、見えなかったその表情があらわになった。
…途端。今度は俺が息をのんだ。
「…うれしい、です。暁人さん…。」
「っ、あゆ…。」
あゆむ君は、キレイすぎる笑顔を、その表情に浮かべたまま…ポロポロ涙を流していた。
その透き通り…汚れを知らない無垢で純粋な涙を見て、無意識のうちに呼吸を止めていた。
は、と息苦しさを感じ、空気を吸い込んだときには…、あゆむ君は俺の腕の中にいた。
どくん、どくん、と…、鼓動が少しずつ高鳴り出す。
…え?…え…?
ど、どういう意味…?
「嬉しい。」って、なんで?
俺の想いは、あゆむ君にとって傷つけるだけの材料のハズじゃ…ないの?
それなのに、なんで…?
…その言葉の真意がわかってはいても、素直に受け入れられずにいた。
俺はあゆむ君みたく純粋に物事を捉えられるようなまっすぐな人間じゃないし…、第一。
…俺のあゆむ君への想いは…、100%いや、120%の確率で一方的なものだと、そう信じ疑わなかったから。
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