第1章 ヒーローに憧れて

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まだ誰も達したことのない境地に俺が……そんな高揚感を小学校の頃から覚えており、正直学校の思い出など特にない 授業中はひたすらハンドグリップで握力を強化し、昼休みはサッカーやドッチボールなどに目もくれず鉄棒で懸垂をし、授業後はひたすら武道に明け暮れる はたからみたら異端なのかもしれない、と最近思えてきた 当時は、あいつなんか浮いてるよなー、なんて言われてもなんとも思わなかった むしろ可哀想とすら思った 浮いてるのは俺以外のみんなだというのに(真顔) だが、こんな俺にも友達はいる 我ながらあんなことをしておいてよく友達なんているよな、と驚嘆している そいつらは親友といっても過言ではないほど信頼しており、同時に俺のパートナーでもある ランニングの時は後ろからメガホン持ってチャリで並走してくれたり、1人だとできない修行を付き合ってくれた 俺が唯一楽しむためにやりたいと思った野球はこの親友の勧誘によって始めた もちろん、武道が楽しくないわけじゃない 日々肉体が研鑽されていくのは言いようのない快感があり、境地に近づいているという感覚はなににも代え難い気持ちがある(当時小学生) だが、目的が違う それに、野球チームのみんなは俺を省いたりせず仲良くしてくれた それまで心を許していたのは親友と呼べる2人だけだったが、これを機に俺のコミュニケーション能力がほんの少し上がった そしてそんな生活を繰り返すこと数年 俺は境地に達する
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