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取引先と打ち合わせが終わったのは、予定通りの15時過ぎ。あとは戻って、出てきてる企画のチェックをして……あぁ、来週の会議の資料も作らないとな。
帰りのタクシーの中、クールビズでも嫌々絞めた客先用のネクタイを緩めて、アイスコーヒーで喉を潤した。
会社に戻ると受付嬢のお面みたいな笑顔が3つ並んでいる。それに返す俺の笑顔も、余所行きの笑顔。365日ほぼ同じなのはお互い様だ。
エレベーターホールに着くと、バッグを肩にかけた彩星がインフォメーションの前で首を傾げている。
「どこに行きたいの?」
「か、神谷さんのところに……」
「優なら、30階のCフロア。企画部の5階下のこのあたりだよ」
彼女の斜め後ろから指し示すと、綺麗な黒髪がサラリと肩を撫でるように流れた。
「高梨さん、30階まで階段で行く気?」
先に乗って、ガラスの壁に寄りかかって腕を組む。
いやいや、そんなに意識しなくても。今朝のはちょっとやりすぎたか?
背中を向けたままの彼女を見つめ続けた。
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