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「着いたよ、30階」
「失礼します」
ちょっとだけ頬を赤らめた彼女が降りていく。
頭をちらつくのは、潤んだ瞳で見上げている今朝の彼女の表情。
「高梨さん」
ボタンを押して、閉じかけた扉を開けると、彼女の少し驚いた瞳と視線が合った。
「今朝みたいな顔、しないで」
俺が戸惑うなんて、有り得ないんだ。
調子が狂うんだよ。あんな表情で、俺を見られたら……。
「キスしたくなる」
聞かせるつもりのない言葉を呟いて、微笑むしかなかった。
壁に肘をついて、ため息を1つ。
……俺、なにやってんだ。マジで。
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