夢屋敷

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俺たちが“あきビル”に着いたのは、昼過ぎのことであった。 “あきビル”というのは、ここ、白髭市(しらひげし)に住む住民の中でも有名な心霊はスポットである。 名前通りのビルではなく、元は木造の古びた個人塾なのだが、ここの塾の経営者は、経営が困難になり、土地を地元の権力のあるオーナーに売り払ったという。 そこを含めて周辺の土地を買い取ったオーナーは、 ビルを建てようとしたそうなのだが、 まず、個人塾を取り壊す際に使った解体業の作業者が三度に渡って事故を起こすという事件があった。 だが、それでも尚強行して解体を行おうとした四回目の解体工場の際にオーナーは、心筋梗塞で亡くなってしまったらしい。 土地的に悪くない場所でありながら、オーナーの息子が債務整理を行ったにも関わらず、次の買い手が何年も現れないで町中にひっそりと“テナント募集”のプラカードが貼られたまま二、三年の間ずっと残されているそうだ。 「ここって噂では聞いたことあるけど、本当に出るのか?」 しかしながら、駅から徒歩五分。近くには多くの施設が並んでいる地元有数の商店街で、そのような心霊スポットが出来ること事態、俺には無理があるように思えた。
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