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電気が通っていないので当然かもしれないが、中は薄暗く、もう少し陽が傾いてしまうと何も見えなそうな状況であった。
一階は主に受付けや事務だったようだが、手当たり次第にホコリまみれの書類が散乱していて、本当に引き払ったのか怪しくなる。
「おいおい、生徒の答案用紙も落ちてるじゃないか。経営破綻したからっていってもこれ、個人情報だろ…。」
足元に落ちていた生徒の答案用紙を拾ってみる。
紙やインクの文字は劣化していたため、汚れていたが、『三条景子』という文字だけは鮮明にはっきりと書かれていた。
三条さんね。
そう言えば昔、あかねの友人に三条という仲の良い子がいたという話を聞いたことがある。
少々不気味に思ったが、名前が名前だけに、本人だったとしたらと思うと早々に処分してあげようという気持ちにさえなった。
なんてことはない、ただの優しさだ。
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