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そしてようやく葬儀が行われ、大納言となった柏木の遺体は荼毘に付された。
……その亡骸も、今となっては本物の柏木だったかどうかわからない。もしかしたら柏木の亡骸は、先にひっそりと火葬され、埋葬されていたのかもしれない。
頼みにしていた長男に先立たれた太政大臣は、その嘆きと心労に一気に老いやつれ、かつての面影もなくなっていたという。そして間もなく、内裏でのすべての職を辞し、政治の表舞台から完全に引退した。
廟堂に残ったのは頭の弁(とうのべん)、兵衛の佐(ひょうえのすけ)など、柏木のまだ若く未熟な弟たち。
年令は夕霧とさほど変わらないものの、親の七光りで何の苦労も知らずに出世してきた彼らは、早くから宮中の荒波に揉まれ、実力で昇進を掴んだ夕霧とは、肩を並べるべくもない。上位にある髭黒大臣は夕霧と玉鬘にうまく手綱を握られ、皇統源氏の言いなりだ。夕霧と対抗できるのは柏木だけだったのだ。
早くも内裏は次代の勢力地図が定まってしまったと、そんなうわさが流れていた。
間違いない。
皇統源氏は勝利をおさめ、藤原一門は敗北したのだ。
勝者の権限として、この犯罪は完全に覆い隠された。
――けれど、なぜ?
勝者と敗者の図はわかる。
でも、なぜ柏木は殺されなければならなかったの!?
なぜ。
誰が、ではない。それはもう、疑いようがない。
疑問はただひとつ。「なぜ」。
わたくしと密通したことを裁かれたのか。
――そんなはずはない。
たしかに他人の妻を盗むことは罪だけれど、源氏の君にそれを裁く資格はない。帝への入内が決まっていた朧月夜と密通し、彼女が尚侍として出仕したあとも、ずるずると禁じられた関係を続けていた彼に。
第一、不義を罰することが目的なら、なんで試楽の宴などという派手な舞台を選ぶ必要があったの。もっと目立たぬよう、ひっそりと柏木の命を奪うこともできたはずなのに。そしていまだに、わたくしになんの罰も与えられていないのは、何故?
では、廟堂での争いの結果?
柏木は手紙に書いていた、必ず源氏の君に勝ってみせる、と。
けれどやはり、それはかなわなかったのだろうか。
二人のあいだに、皇統源氏と藤原一門とのあいだにどんな闘いがあったのか、わたくしには知るすべもないけれど。
敗北の代償に、柏木は毒杯を与えられて……。
まさか、そんなことが許されるの?
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