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内裏での闘いに決着がついても、勝者は敗者の生命までは奪わない。官位を剥奪し、遠い辺境の地へ追いやるだけ。それが今のやり方なのに。
もしも生命まで奪ってしまったら、死した敗者の魂が怨霊となり、勝者に祟ってしまうから。人の身を苦しめる病も不幸も、都を襲う天変地異さえ、すべては怨霊のしわざだとされる。
源氏の君は、柏木の怨霊も恐れはしないということ?
いいえ……もしかしたら。
ふと、かつて柏木が言っていたことが思い出された。
源氏の君が須磨へ落ちるころ、当時まだ東宮だった冷泉さまについて、妙なうわさが流れたと――。
わたくしは顔をあげた。
もしかして、そのせいだったの?
そう考えると、すべてのことがつじつまがあってくるような気がする。
柏木が源氏の君を追いつめようとしていた、切り札。それが、その冷泉さまにまつわる秘密だとしたら。
冷泉さまが突然退位されたのも、それなら納得がいく。東宮に譲位しなければ秘密を暴露すると、柏木が脅したのかもしれない。
いったい、どんな秘密なの。
柏木がそれを知ってしまったがために、殺されたのだとしたら。
わたくしも、それを知らなくてはならない。
「女三の宮さま。お食事でございます」
中年の女房が女童を従えて、食事を運んできた。
次々にわたくしの前へ並べられる、贅を尽くした料理。
けれどわたくしは、箸もとらなかった。
「いりません。食べたくないの。下げてちょうだい」
「紗沙さま……」
そばに控える小侍従が、心配そうにわたくしを見る。
けれど無理に食事を勧めようとはしない。
小侍従も知っている。なぜ、わたくしが食事を拒むか。
――都も場末の市まで行けば、怪しげな祈祷師や薬師も大勢いる。金次第で、どれほど危険な呪符や薬でも、用意してくれる連中が。
堕胎の薬だって、簡単に手に入れられるのだ。
六条院で出されるものを、うかつに口にするわけにはいかない。
わたくしのお腹に宿る柏木の子が無事に生まれるのを、源氏の君はけして望まないから。
わたくしの懐妊は、すでに六条院全体に知れ渡っていた。誰から聞かされたのか、お寺に籠もられたお父さまからも、心をこめた祝いの品々が届けられた。
けれどめでたい雰囲気とはうらはらに、本当にこの子の誕生を待ち望んでいる人間は、六条院の中にはわたくしと小侍従以外、誰もいない。
源氏の君は紫の上に、
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