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「お待たせ致しました1580年物のホットワインです」
初物の酒を空けるのは何時も緊張する。
先ずティスティング。ティスティングは重要だ。酒と体の相性が悪いと、如何に俺の体が遺伝子組み換えされているとは言え、臓器に異常を来してしまう。
舌の上でじんわりとホットワインのフルーティーな甘味が広がると、喉元から熱きものがむわっと込み上げて来た。
これは……。
「―――――!」
「何と! アルコール度数がメーターを振り切っとる」
マスターがグラスを拭く手を止めて驚いた。
飲んだ酒のメチルアルコール度数は腰に巻き付けた変身チェーサーにグルーヴゲージに表示される――。
腰にチェーサー。
端から見ると何処から、酒を注いでいるんだと言われるだろうが、そんな事はどうでもいい。
このお店『ドランク・バー』は今、閉店の危機に晒されているのだ。
「ホットワインを飲むには、情熱的で野性的で狂気的なホットな心でなければお酒に飲まれます」
「それを早く言えよソムリエ! 体が火傷したみたいに暑いぞ! 誰か水を」
「はい」バイトの姉ちゃんが水をついで来てくれた。
「有り難うよ!」
水を一気に流し込むと、アルコールが中和されチェーサーのグルーヴゲージが速やかに下がって行く。
「もう少し飲める酒はないのかよ」
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