第1章

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 俺の右拳が次五朗の左頬にクリーンヒットし、溜まった怒りのエネルギーをまともに受けた次五朗は店内のテーブルや椅子をひっくり返しながら遠くまで吹き飛んだ。 これが激オコフォームの真価だ。  「大変! テーブルが」  看板娘はいそいそと散らばったテーブルを片付け始める。  「ふむ。やりますな。然し壊した物は弁償して貰いますよ」  マスターは冷静に観戦しながら冷静に突っ込んだ。  「よくも僕のイケメン顔に傷を……」  次五朗はヨロヨロと立ち上がる。  「次はアンパンマンでもパンパンマンにでもしてやるよ」  「呑太郎、殺す……」  次五朗の雰囲気が明らかに変わった。キレたというか寧ろ。醒めてる!  「殺す! 殺す!」  次五朗はそう言うとユラユラと俺に近付きながら刃物を取り出した。 日曜番組で殺すとか刃物とか、イケメンライダーがはしたない事するもんじゃあないだろう。 全国のちびっ子が真似したらどうなる?  そんな事など知った事かとビュンビュンと刃物を降り回して来る。 これはどうにかしないと。  「ガ、ガジェットチェンジ! 笑い上戸セット!」  俺は怒り上戸を笑い上戸にガジェットを交換する。 笑い上戸は、笑う事により体内のナチュラルキラー細胞が活性化して、脳内から快物質を大量に分泌させる。 それにより、受けたダメージの回復速度を格段に跳ね上げる。 次五朗の顔がだんだん可笑しく見えてくる。  「はーはっはっは! 何だその面は? ジゴロが台無しじゃないか! ああ可笑しい」  「バカにしやがって」  次五朗は怒りに身を任せて刃物を無我夢中で振り回してくるけど、俺は、抱腹絶倒で上段の攻撃を、仰け反りで中断の攻撃を、飛び跳ねて下段の攻撃をヒラヒラと交わす。 リアクションも派生技の一つなのが笑い上戸の特徴だ。  「くそ。何故当たらん」
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