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『どういたしますか?』
『向こうの狙いがわからない。しばらくは様子見だな』
ガイアと念話を交わしながら、何気なく視線の持ち主を視界の端にとらえた。無論、その相手を直接見るのではなく、周囲の建物が気になったふりをして。
『三十代の男ですね。身なりはあまりよくありません。中肉中背、肌の色はやや褐色がかった白、髪の色は茶』
『知り合いでは無さそうだな』
男はリューティスとガイアの後をつけてきている。貴族を狙った犯罪者か、はたまたガイアを狙っているのか。どちらにせよ、今、ガイアが標的とされているのは間違いない。
『心当たりは?』
『大量に。王太子になってからたまに命を狙われるが、いつも歯ごたえのない相手でな』
ガイアは立太子する前、炎帝として幼い頃から戦場に立っていた。そこらの冒険者崩れの無法者では物足りなく感じるのも当然である。
『今回もその類いかもしれないな』
『相手の目的は何かは?』
『知らん。口を割らせようとすると、奇怪な術で自滅する』
『……魔法ではなく術ですか』
この世には魔法とは異なる摩訶不思議な力が存在している。その存在自体はうっすらとであるが感知できるが故に、信じるも何もないが、リューティスには操ることのできない力である。
『ああ、魔法ではないことは確かだ。少なくとも魔力は感じなかったからな』
魔力が絡まない不可思議な力となると、やはり『呪い』等と呼ばれているあれらの力に類する術であろう。
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