44982人が本棚に入れています
本棚に追加
「お疲れさん」
「お疲れさま」
シルウィがリューティスのすぐ隣に腰を下ろす。少年たちも近くに座った。
パンの切れ込みにチーズと干肉を挟むと、指先に魔法で火を灯し、パンの表面を炙った。
「……器用だな」
「そう?」
チーズがほどよくとけたところでかぶりつく。パンがフードにあたりそうになり、空いている左手でフードを脱いだ。涼しい風が首筋にこもっていた熱を冷やす。
無言で食べ進めていると何やら視線を感じて目をあげた。少年たちの中で一番年長だといっていたツェンと目が合う。
彼はすぐに目をそらした。その耳が赤い。首をかしげてシルウィを見ると、彼女は笑っていた。
「美人で驚いただろ」
「お、女だったのかよ!」
リューティスは手を止めた。なぜこうも自分は性別を間違えられるのだろうか。
思わずため息を吐き出して項垂れた。シルウィがけらけらと笑う声が聞こえる。
「リュースは男だぞ」
「……っは?」
「あたしも最初は迷ったけどな。冒険者仲間が宿の男湯で見たっていってて、耳を疑ったわ」
つまり、彼女にも間違えられかけていたということだ。
「お、男……? こんなに美人なのに……?」
「嘘でしょっ? 俺のかーちゃんより美人だよ!?」
ネルとストラの呟きに言い返す気力もなく、ため息を呑み込んでパンにかぶりついた。
.
最初のコメントを投稿しよう!