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探索ついでに見つけた木の実を採集し、野営地に戻った。
「──お帰り。どうだった?」
鍋の中身をかき混ぜるシルウィに訊ねられ、手にしていた熟した木の実を差し出した。
「問題なかったよ」
「見つけたのか、これ?」
「うん。よく熟しているから甘くて美味しいと思うよ」
「切り分けていいのか?」
「うん」
そのために見つけてきたのだ。切り分けてくれるというなら、切り分けてほしい。
「わかった。ありがとう」
シルウィの笑みに笑顔を返し、リューティスは適当な場所に座り込んだ。夕食の準備を手伝いたいところであるが、人手は足りているようである。少年たちのうちの二人──ネルとアゥムも手伝っていた。
残りの二人──ツェンとストラは、隅の方で手合わせをしていた。十四歳のツェンと十二歳のストラでは身長や体格に大きな差がある。しかし、ストラはその小柄な体格をいかして、素早く距離を詰めて攻撃しては退避するのを繰り返し、ほぼ互角に渡り合っていた。
己の血に獣人族のそれが混じっていることを、ストラは知っているのだろうか。
ぶつかり合う剣と籠手。響く音。
「まだまだだな」
鍋をかきまぜるシルウィの呟きが聞こえた。
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