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ジョッキを手にしている彼女の頬はうっすらと赤くなっていた。既に酔い始めているのだ。
目を見開いた客にヤンは声をあげて楽しそうに笑う。
「AAですよ、AA! びっくりのランクですよねー。なんでもナナリーさんを振り向かせたとか何とか」
「あぁ! あの噂の美人か! 噂に違わない美人だな!!」
その噂とやらはどこまで広がっているのだろうか。レイガンの隣に座るこの客は、がっしりとした体格をしてはいるものの戦いを知らぬ者だということは纏う雰囲気からわかる。戦いに生きる者特有の血生臭い雰囲気が一切ないのである。
つまり冒険者以外にもあの噂は広まってるということであり、目立ちたくなかったリューティスには嬉しくない状況だ。
それよりも美人という評価にどうにも違和感を感じる。たとえ自分が彼のいうとおり美人であったとしても、リューティスは全く嬉しくない。
「ナナリーさんに一瞬で勝ったって聞いたぞー。お前さん見た目に似合わず強いんだなぁ」
これまた嬉しくない評価である。父親似の男らしい顔立ちになりたかったが、年々母親に似つつある自分。どうすることもできない問題であるができることなら顔立ちは父親に似たかったと思っている。
リューティスは黙って桃酒に口をつけたのだった。
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