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「そうか。それならあえて聞かないでおこう」
期待を込めた視線を向けてくるガイアに、リューティスは苦笑した。
いくつかの雑貨屋を覗き込み、気になる商品を見つけては手にとって眺めた。結局買ったのは野営時用の木製の皿数枚だけであったが。
西の空が赤らみ、行き交う人々が家や食事処へと足を向け始めた頃、ガイアとリューティスも帰路についた。
夕食はガイアが屋敷で饗応してくれるという。ガイアと並んで歩いていると、ふと強い視線を感じた。
リューティスもガイアも目立ってしまっているのか、ちらほらと視線を向ける者は大勢いるが、ガイアが貴族に見えるせいかあまり見てもいいものだと思われていないようで、こちらを長時間見続ける者はいなかったのである。
しかし、その視線は数十秒に渡ってこちら──主にガイアに向けられ続けており、今もなお、そらされることはない。
『──ガイア』
『ああ、わかっている』
声に出さず、念話魔法で彼に声をかけると、同じく念話で短い答えが返ってきた。彼も職業柄、視線には敏感な方で、数十秒もそらされずに見つめられ続ければ気がつく。
護衛騎士のアンソニーはまだ気がついていないようである。下手に気がついて行動を起こされるよりは、気がつかずにいてくれた方がこちらとしては楽だ。
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