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『まだついてきますね。路地に入ってみましょうか?』
『それも一つの手かもしれん』
すなわち、自らの身を囮にして釣ってみる、というのだ。
『問題はアンソニーだな』
彼はまだ、後をつけてきている男の存在に気がついていない。もし気がつけば帯びている剣を抜き放とうとするだろう。
『どうなさいますか?』
『巻き込んでしまえばいいか。サキカ、頼む』
『わかりました』
ガイアが何を自分に任せようとしているのか、リューティスはすぐに悟って内心で苦笑した。もちろん、表情には出さなかったが。
「ガイア、あそこの店、寄ってもいい?」
リューティスは路地にある小さな古書屋を指差した。
「本屋か。相変わらずだな」
リューティスの本好きは昔からで、幼馴染みでもある彼はそれをよく知っている。ガイアは演技ではない笑みを小さく浮かべた。
「今はどんな本を読んでいるんだ?」
「この間は魔物の地方名が記されている本を買ってね──」
会話をしながら、路地に足を踏み入れる。
『動いたか?』
『動き始めましたね』
そして、口で話しているとは異なる内容を、念話で伝え会う。
「面白そうだな。あとで貸してくれ」
「うん」
男の気配が徐々に近づいてくる。
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