十章 戦争孤児

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  「だよなぁ、どっちか迷うよなぁふつう」 「え、あの、本当に男なんですか?」 「少なくとも伝統衣は男モンだったし、名前も男のモンだな」 「じゃあ本当に男……?」 「ギルドカードも男だったし男じゃねぇの?」  思わず額を抑えて目を閉じた。溜め息を吐き出して思い返す。せめてもう少し成長して顔立ちから幼さが消えれば男らしくなるだろうと思っていたのだが、年々母親の顔立ちに近づいていることから考えてそれは希望的観測かもしれない。 「……疑いなさるのでしたら銭湯にご一緒しましょうか?」 「そっそれは……」  目を開ければ見えたのは真っ赤な顔でリューティスから目をそらすベインの姿。諦めたリューティスは自尊心ががりがりと削られる音から耳を塞ぎ、首を横に振る。 「……何か食べられそうですか?」 「あ、はい。お腹すきました」  ベインの返答に安堵してレイガンに視線を移す。 「夕食はどこで食べる?」 「あー、ここの下でいいか?」  笑っていたレイガンであったがすぐに答えが返ってきた。 「先に行ってるね」 「わかった」  レイガンの声と共に何やらリューティスを慌てて引き留めようとする声も聞こえてきたが、歩き出した足を止めることはせずに廊下へと出た。 .
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