十五章 知らぬ魔力

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  「僕は構いませんが……、レイガンさんはどう思う?」  周囲は騒がしく受付嬢とリューティスたちの会話を聞く者はいない。レイガンがよければそれで構わないと彼に判断を委ねると、レイガンはきっぱりと言った。 「ベイン──この坊主を見ててくれんなら構わん」  受付嬢はレイガンの視線をたどるようにしてベインに目を向けた。ベインはぱっと顔をあげて不安げな様子でレイガンを見上げる。受付嬢は迷うことなくうなずいた。 「わかりました。彼は私が責任を持ってお預かりします」 「頼む。……ベイン」  不安に揺れる幼い瞳に、レイガンの瞳も僅に揺らいだ気がした。しかしレイガンはその頭を撫でると、引いていたベインの小さな手を受付嬢に手渡す。 「終わったらすぐ迎えに来るからな」 「……わかった」  ベインは目を伏せてこくりとうなずいた。その様子を心配げに見ながらもレイガンは集まり始めていた冒険者たちの方へと足を向けた。リューティスは俯いたベインにかける言葉が見当たらず、ちらりと受付嬢に目を向ける。 「……ベインをお願いします」 「はい」  返事を聞く前に踵を返したリューティスは、背後からかけられた力強い声に引かれていた後ろ髪が断ち切られ、背中を押された気がした。 .
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