十六章 討伐せよ

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   森百足の討伐を優先させるのは、ダンゴムシ──甲冑団子虫の殻が異様に固いことで有名だからである。甲冑団子虫は噛む力は強いが口が小さいため、噛まれても肉をえぐられるだけで手足を切断されることは滅多にない。  森百足の殻も固いことで有名だが、甲冑団子虫ほどではなく、また比べ物にならないほど厄介な牙を持つ。故にこの二種のどちらを優先的に討伐すべきか意見を集えば、まず間違いなく皆森百足だと解答するだろう。  よって反対意見は全く出ることなく、冒険者たちは一様に頷いた。 「無理をする必要はないが、できるかぎり素早く倒す必要がある。聞いていただろうが近くに村がある、人数が揃い次第出発するぞ」  そこで一人が手を挙げた。 「移動はどうするんだ」  魔物の群れがあるのは街から馬で二十分と少しの場所である。徒歩での移動では、到着した頃には村が滅んでいてもおかしくない。 「まだ決まってないが──」  レイガンは近づいてきた受付嬢に目を向けた。 「移動は馬車になります。──あの、リューティス様」 「はい」  移動手段の話だけではなかったのかと受付嬢に目を向けると、彼女はどこか怪訝そうな、訝しげな、不思議そうな── 一言で言い表すならば何か納得できないことでもあったのだという顔であろうか──表情をしていた。 「リューティス様には先に行っていただきたいのですが」 「わかりました。馬でですか?」  受付嬢の考えは理解できる。リューティスが先に行けば村が助かる確率が格段に上昇するからだろう。 「……いえ」  受付嬢は短く言葉を切ると大きく溜め息を吐き出した。 .
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