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「先程、“月の光”にリューティス様のお力をおかりすることを現状の説明と共に報告したところ、リューティス様を先行させるよういわれまして」
リューティスは“月の光”に所属している──ことになっている。実際には“月の光”の隊に所属しているのだが、『リューティス』は隊に属さない一般所属者である。
他ギルドの所属者の力を指名依頼という形で借りる場合、力を借りる前にその所属者の所属ギルドに報告をせねばならない。ただし、力を貸すか否かの判断権は所属者にあるため、所属者に助力を頼んだ後、所属ギルドへの報告を行うことになる。
無論、他ギルドの所属者に無理させてはならない。自身のギルドの所属者であれば、全てはギルドマスターの判断に委ねられるが。
故にできるかぎり子細に報告を行う必要がある。
「馬を用意すると申し上げたところ、必要ないとのお言葉が返って参りました」
リューティスは思わず眉をぴくりと動かした。──心当たりはある。それも一つではなく二つ。
レイガンが受付嬢と似た表情でリューティスを見た。周囲からの突き刺さるような視線を感じながら考える。一体、連絡を取った相手は誰であろうか、と。
「……一つ訊ねます。報告をなさったお相手はマスターですか?」
「はい」
返ってきた肯定に頭を抱えたくなってしまった。
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