三章 脱出せよ

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   『合図』やらは盛大だった。勿論、おそらく地下であるこの牢に窓などなく、時間は体内時計で大雑把にしかわからないが、皆が寝静まった真夜中に起こった突如響き渡った爆発音と激しい揺れ。牢の檻が軋む音を立てる。  仮眠をとっていたリューティスはふとその直前に目をさまし、魔法の発動の気配と共に『合図』が起こるや否やすぐに立ち上がれるように体勢を整えた。氷属性魔法で作り上げたナイフを左手に隠し持ち、皆が目をさます様子を眺める。 「何っ!?」 「きゃあっ……」 「やだ何なの!?」  いくつか聞こえてきた悲鳴。灯火も消された地下牢は暗闇に包まれており、リューティスでもほとんどその姿を見ることはできなかった。  ただ魔力と気配で皆が起きたことを悟ると、階上の方に意識を向ける。慌ただしい気配の中に外からいくつかの気配が入ってきて、いくつかの魔法の発動の気配を感じた。  そして二つの気配がこちらへ向かってくる。 「急げ!」 「……っあぁ、おまえ鍵は持ってるよな?」 「当たり前だ!」  圧し殺した会話声。階上から降りてきた二つの気配が、音をたてて牢のある部屋の扉を開けた。囚われている者たちが大きく身体をすくめる気配がし、その声が止んだ。  二人のうちの一人は足早に牢の前を通りすぎてその突き当たりにたどり着き、直後何かを引きずる音がする。暗いせいで何をしたのかまでは見えなかった。もう一人はリューティスたちが入る牢の扉の前に立ち、そして鍵を解錠した。  ──今だ。  瞬時に身体強化をしたリューティスは、扉を開けた男に飛びかかった。首筋に手刀を入れの意識を刈り取る。崩れ落ちる身体を受け止め、静かに地面に下ろした。  呆然とこちらを見る囚われた者たちに人差し指を立てて見せる。彼女たちは一斉に手で口を覆った。 .
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