十六章 討伐せよ

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   馬を駆り、向かう先は北。魔物の群れがあるのは、山というより大きな丘といった様子の、なだらかに広範囲に土を盛ってその上に森を作ったような平たい山の中腹辺りである。  遠くに馬車の気配を感じる。リューティスに遅れて街から冒険者を乗せた馬車が出発したのだろう。  山を登りはじめてしばらくして、木々の密度が適度に増えた辺りで馬を降りた。騎馬戦をするつもりはない。会ったばかりの馬と連携をとることより、地面に降りて戦うことを選んだ。  馬は木に手綱を繋いで結界で囲んでおく。賢い彼が逃げるとは思えないが、魔物から守るにはこうしておくのが一番だ。 「少し待っていてください」  彼に声をかけてから踵を返し駆け出した。木の枝の上に飛び乗り、木から木へと飛び移り森の中を移動する。  標的である魔物の群れは近くにある村に少しずつ接近していた。戦闘を始める前にこれ以上の接近を防ぐべきだ。  魔物の群れの前に村がある方向を背に降り立った。 「我らを護るは大木の精。美しきアルラウネよ、我らに加護を。“森の守護”」  ──植物属性上級魔法“森の守護”。  詠唱の短い防御魔法を紡ぎ、魔力を練り上げ、魔法を展開させる。  リューティスの目前にいくつもの木の芽が生えた。横一列に生えたそれはたちまちに成長し、隙間のない一面の壁と化す。  その壁の枝を足場にかけ上がり、警戒した様子で立ち止まった魔物を見下ろした。  リューティスが今すべきなのは魔物を攻撃することではない。村へ魔物が行かぬようにすることと、森に生息する上級魔物を刺激しないことだ。 .
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