十六章 討伐せよ

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   もうじきに冒険者を引き連れたレイガンがやってくる。彼らが来る前に上級魔物の様子を確認しておこうと、魔力を感知する範囲を広げた。  森にいる上級魔物は銀狼(シルバーウルフ)という狼型の魔物である。最上級魔物には人の言葉を理解し意思疏通が可能性な知能の高い個体もいるが、上級魔物である銀狼と意思疏通を行うのは無理である。最上級魔物ならば相手の性格によっては会話による説得もできるのだが。  だが、もし上級魔物が襲ってきても追い払う方法がある。それはこちらの力があちらより明らかに上回っていることをわからせるという方法である。  しかしながら殺気を放って上級魔物を追い払うのは避けたい。それが可能なのはSSランク以上の強者くらいだからである。自ら進んで目立ちたくない。  幸いなことに銀狼は今のところ大人しく、動く気配はない。それにしても、と思う。銀狼が一匹でいるのは珍しい。銀狼は群れで暮らす魔物である。一匹で過ごしているのは、群れを追われたからかもしくは群れが崩壊したからか。  静かなその気配が理由を語ることはない。  リューティスが作り上げた壁を上ろうとしては落ちる甲冑団子虫を見下ろす。甲冑団子虫は森で出会うだけならば全く害はないのだが、村や街に群れでやって来たとなると話は別だ。  甲冑団子虫は何でもよく食べる。特に人が作る作物は好みなようで、群れが来たらまず間違いなく畑は荒らされて、収穫してあった作物も食い荒らされるのだ。 .
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