十七章 迫る別れ

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   ──出会いの裏に別れがある。また、別れの裏に出会いがある。旅の出会いは一期一会で、いい出会いもあれば忘れたいと願う出会いもあるのだ。  幼い少年との出会いがそのどちらであったのかリューティスにはわからない。彼を見、彼と共に過ごし、思い出した暗闇。目を開けていても前は見えず、もがいてももがいても抜け出せない泥沼の闇夜。明かりのもとに抜け出せたのは、一体いつのことだったのか。  気がつけば日のもとにいた。紅髪の親友が自分にとっての太陽で、育ての親は闇の中を静かに照らす星だった。  孤独さが似ていると思っていた月の周りにはいつも星がありそれを羨ましく思っていた頃もあったが、リューティスの傍にも月を照らす太陽と寄り添う星があったのだ。  それでも彼らに頼れなかったのは自分で、彼らのそばから離れたのも自分だ。いつか帰りたいと願いながらも帰るのが恐ろしくもある。  リューティスを引き留めていた存在はリューティスを忘れてしまった。あの瞬間から帰る場所を失ってしまったようだった。  帰る場所が実際になくなったのではない。長年過ごしてきた小さな部屋は変わらず今も部屋主の帰りを待っているだろう。  リューティスが亡くしたのは、いつもあの部屋にあったあたたかみであった。 .
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