十七章 迫る別れ

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   目をそらし首を横に振る。 「本当に大丈夫です」  レイガンは渋い顔をした。納得いかない様子でリューティスの額に再び手を伸ばしてくる。 「何かあったのか? 手紙の内容が酷かったのか?」  手紙とは昨日受け取った友人からのもののことであろうか。彼らの手紙はいつもと変わらず、平和で穏やかな日常が綴られていただけである。 「違います。……大丈夫です、本当に」  ベインが羨ましい──などとは口が裂けてもいえない。そのようなことを口にすれば両親について問い詰められるだろうということは目に見えている。  話すことに問題があるのではない。ただ単に口にしたくないのと既に解決していることであるからだ。  リューティスと産みの親は既に和解している。彼らに何の恨みもない。──彼らは何も悪くないのだから。 「……無理はすんなよ」  レイガンは渋い顔のままベインを連れて机の方へと戻っていった。手にしたままだった本に視線を落とすが、ちらちらとレイガンの視線がこちらに向けられるのを感じる。  心配をかけてしまったらしい。レイガンからすればリューティスはまだ子供であり、庇護すべき対象なのだろうか。  本の内容は相変わらず頭の中に入っていかなかった。 .
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