二十章 西へ

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  「ありがとうございます」  礼の言葉を口にしてからその背を追う。たどり着いた小さな台所である。 「……うちの村の主食は芋だ。麦は滅多に食わん」  オウルは台所の隅に山積みになった芋を指差した。馬鈴薯でもさつま芋でもなく、あまり目にしたことのない拳三つ分くらいの大きさの丸くて黒っぽい芋である。 「少しぱさぱさしているが、蒸かしてそのまま食うことが多い」  芋をいくつか手にとって汲み置きの水で洗おうとした彼を止める。 「何だ?」 「失礼します。──“清めの水”」  ──水属性中級魔法“清めの水”。  魔力を練り上げて詠唱破棄すると、芋についていた土は綺麗さっぱり消え落ちた。 「……魔法か」 「えぇ。洗うのはこれだけですか?」  土の落ちた芋をまな板に置いたオウルは、いくつかの野菜をリューティスに手渡してきたのだった。 .
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