四章 囚われていた女性たち

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   眩しい朝日に目を細め、喚び出した鞘に刀をおさめた。女性たちは衛兵に保護され、安堵の様子を見せている。  衛兵の一人がこちらにも向かってきた。 「ど、どうぞこちらをお使いください」  なぜか緊張した面持ちの衛兵に差し出されたのは一枚の毛布である。見ると保護された女性たちは皆毛布にくるまり、一台の馬車に誘導されていた。 「いえ、僕は──」  事情を説明しようとしたが、こちらに駆け寄ってくる気配を感知して振り返る。 「あ、リュースさん!」  たしかリューティスにこの依頼の依頼書を手渡した受付嬢であった。受付嬢は乱れた息を整えるとリューティスをまじまじと見つめる。 「……やっぱり美人ですねぇ」  リューティスは首をかしげた。たしかにリューティスの母親は昔、すれ違えば十人中九人は振り返る美人だったらしいが、それに似たリューティスが美人であるとはかぎらない。  そしてリューティスは男であり、美人といわれても全く嬉しくなかった。 「僕の顔立ちは大して整っておりませんし、第一僕は男です」 「……えぇっ!?」  わずかな間をあけて衛兵が叫び声をあげた。 「男っ!? うそだろ!?」 「……ギルドカードの確認でもなさいますか?」  あえておとなしく提案した。この作戦の前、女装した直後に鏡を見てしまったリューティスは、反論しても意味がないと理解してしまっている。 .
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