二十三章 越境

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   ギルド“林檎の香”の建物は、林檎の形をしていた。近づいてみると、煉瓦を積み上げて作られているのがわかる。 「かわいいギルドだな」 「そうだね」  レイガンの率直な感想に同感しつつ、ギルドの扉を開けた。ギルドの中にはすでに冒険者が集まりつつある。  すれ違った人々を見ても思ったことであるが、西の国の服装は中央の国の首都の服装の常に一歩先を歩んでいる。流行の三歩も四歩も遅れた中央の国の辺境から西の国へと渡ると、その差は酷く激しいものとなる。  中央の国の辺境といえば、男性は麻布の開襟シャツが主流で、下もこれまた麻布の太めのズボンがよく売られている。女性は麻布の開襟シャツに踝丈のスカートだ。  しかし、この街の人々を見てみると襟なしのシャツを着ている者が多く、ズボンも様々な形がある。女性のスカートやズボンは膝上が一般的なようであり、人によっては股下十センチメートルほどの丈のスカートをはいている者もいた。  形も違えば色も異なる。中央の国では平民は褐色から黒や紺に染色されたものをよく着ているが、こちらでは淡い水色や黄色、緑色など、色とりどりの服を身にまとっている姿を見かける。  中央の国で濃い色に染色された服を着ている者が多いのは、平民の服が買われた時点で新品ではなく、大抵使い古された古着であるのが原因だ。汚れや染みを誤魔化すために染色し直して売られているのである。故に、淡い色の服は高価だ。 .
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