二十三章 越境

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   中央の国と西の国の違いは、服飾の職人の数の違いだ。服というのは手縫いか高価な魔導機を用いて作られている。魔導機の発達したこの国では無論服を縫うための魔導機も比較的安く売られており、また服飾の職人も多い。材料となる布や糸と比べて服が驚くべきほどに高価なのは、服を縫い上げるという手間がかかっているからだ。  つまり、中央の国より西の国の方が服が安価なのだ。平民でも淡い色の服を身に纏えるのは服が安価で、染め直しをして売られている古着が少ないからである。  依頼掲示板の前には人だかりができていた。レイガンもリューティスも身長は高い方であり、巨漢が視界を塞がない限りは大抵隙間から覗き見ることができる。 「おっ、首都まで護衛依頼があるぞ」 「あ、本当だ」  レイガンが手を伸ばしてひょいと掴みとる。一先ず人混みから離れた彼に依頼書を見せてもらう。 『依頼内容:シェイトンから首都までの隊商護衛 依頼ランク:C 依頼制限:C(Dランク以上十人以上十三人以下) 依頼主:ララフ商会代表 依頼期限:第一の月十九日~第一の月二十九日 報酬:一日銅貨五枚 備考:水・食糧は商会持ち(一日二食)、その他必需品は各自用意。中級以上の魔物と遭遇し無事に逃れられた場合、銅貨五枚~その都度報酬を上乗せする』  シェイトンはこの街の名前だ。また、ララフ商会といえば、書物の売買を主に行っている商会である。中央の国にも足を伸ばしているため、リューティスにも聞き覚えがある。 .
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