二十三章 越境

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  「持ってんなら着ろよ」 「……汚れが目立つから」 「血飛沫くらい避けれっだろ」  彼の言う通りではあるが、育ての親から贈られた服をできるかぎり汚したくないのである。  そこまで考えて、新しく買えばいいのだということに気がついた。しかし、購入するならば安い服を買うわけにはいかない。  安い服は、皆、魔力に耐性がない。魔力に耐性がない服や魔力耐性の低い服は、リューティスの場合触れただけで塵と化す可能性がある。  魔力耐性の高い布材は高価なものばかりで、原料が高価ならば無論服も高価になる。 「ついでに服探すかー?」  レイガンの言葉に苦笑いする。 「買うなら魔力耐性が高い服買わないといけないから、ここだとあんまり売ってないかもしれないよ」 「普通においてあるだろ」  不思議そうな顔をしたレイガンに眉尻を下げた。彼基準の『魔力耐性の高い服』では、間違いなくリューティスの魔力に耐えられない。  リューティスは魔力の質が高い。魔力の質は八段階にランク付けされているが、リューティスの魔力は最高ランクのS──それも現存する測定器では測定不能の濃さだ。  魔力の質は勿論、身に纏っている服にも影響を与える。多少耐性の高い程度の服では身体強化をしただけで瞬時に霧散してしまう。離れた場所にいる人の服まで影響を及ぼすことはないが、自分の着る服は魔力耐性の高いものでなければ魔法を使おうとした瞬間に塵となる。 .
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