二十三章 越境

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  「……巨大芋虫の糸から作った絹って知ってるよね」 「ん? あぁ、中堅どころの冒険者が下着に使ってるやつだろ? あれなら大丈夫だろ」  巨大芋虫は魔物の一種であり、その名の通りとにかく巨大な芋虫だ。その糸から作られた絹は丈夫で魔力耐性も比較的高い。冒険者が好んで身に付ける服となる。 「その……巨大芋虫の絹だと身体強化しただけで散っちゃうから」 「…………は?」  足を止め唖然とした顔をリューティスに向けたレイガンに苦笑した。 「いろんな布で試したことがあるんだけど、……巨大芋虫の絹は耐えられなかったんだ。虎面蜘蛛の絹はどうにか数秒持ったけど……」 「一体どんな魔力してんだよ」  恐れられるかとも思ったが、彼は呆れた顔で首を振った。しかし、こちらの方が恐がられ忌避されるよりずっといい。  思わず笑みを浮かべればまた乱暴に頭を撫でられ、だが今回は丁寧にリューティスの髪をすいてからその手がさげられる。 「いつも着てる服は何でできてんだ?」  歩き始めた彼の隣に並んだ。 「……黒曜蜘蛛、かな」 「なっ!」  勢いよく向けられた彼の目は大きく見開かれていた。黒曜蜘蛛の絹から作られた衣服は、高ランク冒険者の憧れといわれている。軽くて丈夫だが柔らかく、魔力への耐性が高く、汚れがつきにくく変色もしづらく、また燃えづらい。まさに夢のような素材だ。 .
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