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レイガンに関しては、リューティスは信用していた。彼ならば余分なことを口にすることはない。
また、彼は貴族の依頼を受けてはいるが雇われているわけではなく、ただ指名依頼を受けているだけだ。雇われているなら雇い主にまで情報が伝わる可能性が高いが、雇われていないのならリューティスがわざわざ秘密にしているのだろうことを伝えるはずがない。
冒険者歴が長くなれば、情報の重要性と危険性を自然と理解する。不用意に秘されている情報を口にすれば、身の危険にさらされることもあるのだということを、身をもって体験したこともあるだろう。
何も考えずに伸ばした手で触れたのは、自らが書いた本であった。懐かしいそれの背表紙を撫で、引っ張り出して開いてみる。
たしかこれは二年前に書いた本である。土属性魔法を応用した鉱山探知魔方陣魔法に関する本だったはずである。
「その時色々聞かれたっていうんだけど、それが面白くって」
「……面白い?」
「自分がどうにもできないでつまずいていることを指摘されて、あげく助言をもらったんだとさ。プライド高いあいつのあの時の顔は忘れられないよっ」
けらけらと笑う店主の声を聞きながら本を戻し、結局六冊の本を手に彼らの方を振り返った。
「……決まったのか?」
レイガンに聞かれて頷く。リューティスは店主に歩み寄り本を見せた。
「全部でいくらですか?」
「すぐに計算するよ」
店主は手を伸ばし机から書籍の一覧表らしきものを取り上げると、リューティスの手にしている本とそれを見比べる。
「結構高価なやつが混じってるけど、お金は大丈夫なのかい?」
「問題ありません」
「そう、なら合わせて金板貨一枚と金貨三枚だよ」
ぎょっとした顔で硬直しているレイガンを尻目に、“ボックス”から金板貨が入った革袋と金貨が入った革袋を取りだし、金板貨一枚と金貨三枚を数えて手渡す。
「まいどあり」
店主がしっかり数えたのを確認してから、本を“ボックス”に仕舞った。
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