二十三章 越境

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   リューティスは彼から見たらまだ子供なのだろう。十六という年齢は大人と捉えられることもあれば、子供と捉えられるともある。中央の国では成人が何歳からかという定義はないが、十八から二十歳あたりまで親の庇護の下暮らすのが一般的な考えである。  十六歳にしてすでに自立しているリューティスは、レイガンには危なげに見えるのだろうか。  旅を始めてから出会った者の多くは、リューティスを子供と捉えて子供として扱った。それが嫌ではないが、どうにも心苦しい。 「……仲違いしていたのです。数ヵ月に再会してその時和解しました」  目を伏せて素の口調のまま答えた。  ただそれだけのことである。仲違いのそもそもの原因は魔人の魔法による思考の操作であり、両親に非はない。 「両親は何も悪くありませんし、僕に非がありました。……いろいろありまして僕は最近まで育ての親の元で生活していたのです」  魔人に付け入られたのはリューティスが原因といえる。もしあの時あの場所にいなかったら、人を一人殺しかけることもなかっただろう。だが、あの場所だったからこそ被害は一人で済んだともいえる。  制御できないものを自分のせいだけだというほど、リューティスの頭は固くない。ただ、自分にも非があったことは否定できない事実だ。 .
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