五章 手合わせ

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   不意に意識が覚醒した。  宿に戻り仮眠を取っていたリューティスは夕方前に目をさました。まだ日は高く、時刻は四時前である。  寝ていた時間は二時間程度であろうか。すっきりした頭を働かせ今日の残りの時間は何をしようかと考えている。  ギルドで依頼を受けるには時間が足りない。かといってそれ以外にすることもないのだ。  鍛練を行いたいが、ギルドの地下の訓練施設には今、あのナナリーという女性がいる可能性がある。さすがに手合わせを乞うたあの男との戦いは終わっていると思われるが、手合わせをしたいと願っていた者は彼だけではなさそうである。  しかし、それにしてもすることがない。読書に費やすのも、調薬や魔方陣の開発に費やすのも自由であるが、どうしても勿体ないと感じてしまう。  リューティスにとってこれらの趣味は、空いたわずかな時間を使ってすべきことであり、長い時間を費やして行うべきことではないのだ。  とはいえそれ以外にすることはない。  迷った末、リューティスは立ち上がった。  服装を整え、防具を身につけ、マントを羽織り、向かった先はギルド“黒龍の翼”である。無論、鍛練のためではない。  街の外に出て行う依頼をこなすには時間が足りぬかもしれないが、街内依頼ならば問題ないはずだ。 .
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