物語は谷底から始まったりしなかったり

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「ああーくそったれ、汚れたじゃねーかお気に入りの服だったのに。」 我輩の目の前で彼女が不機嫌そうにそう呟いた。 「…珠枝。我輩、女の子はもうちょっと丁寧な言葉遣いをするべきだと思うのだ。」 「うっせぇよボケ親父。ていうかどうすんだよこれ。」 控えめにそう声をかけた我輩に向かい彼女は‘血塗れ’た眼鏡を顔から外して拭き始めた。 ……我輩、鬼である。名前はまだない。 …嘘です。「馬鬼(ばき)」という名前がちゃんとあります。 我輩、これでも3メートル近くある巨人なのだ。 で、目の前で悪態つく口の悪い彼女は珠枝(たまえ) 我輩の下僕である。 彼女は半分人間で、半分鬼の所謂‘鬼人(きびと)’と呼ばれる存在である。 まあどんな存在なのかは、追って説明するとして… 目の前の問題に我輩は意識を向けた。 「うむ。誠持って面倒なことになった。」 我輩は珠ちゃんにそう言った。
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