時は経つ。

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黒板にチョークが当たる音と、気だるそうな男教師の声だけが教室に響きわたる。 木の葉なんて一枚もついていやしないような季節が俺はいちばん気に入っている。 静かで、綺麗で、何もない。 そんなまっさらな空間に雪が降ってくれた時には、無音のまっさらな真っ白な世界が出来上がってくれる。 窓の外に目をやる。窓際の席は左を向けばすぐに授業とは真逆の世界へといけるのだ。 昨日から、関東の田舎にしてはそこそこ多い方の雪が降っていた。 普段は茶色くて見る気も起きないようなグラウンドも、今日ばかりは白一面の幻想的な世界へと変化する。 ああ、これだよ。これ。 毎年これを楽しみにしていたんだよ。 砂糖菓子のような木だとか、体育の声が聞こえないグラウンドだとか、ふだんと変らないはずなのにどこか静かな。 そんな。 教師の声に呼び戻される。 黒板には問題が書かれている。 そう言えば全くなにも聞いていなかったな。わからないや。 「柳(ヤナギ)。コイツ解けるか?」 嫌な顔してやがる。心の中であざわらってやがる。うざい、むかつく。 窓の外を眺めていたのは確かに悪かった。くそ。 問題の答えは俺の頭には閃いてはくれない。 隣のやつに紙を渡された。
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