第1章

2/10
前へ
/48ページ
次へ
「おはようございます、お目付けさま」  障子の向こうから、優しく起こされて、ぼんやりと目が醒める。 時計を見れば、4時を少し回ったところだ。  思わずため息が零れた。 「……オハヨウゴザイマス。姫はもう?」 「はい。すでに御日供(おにっく)に」  主が起きているのに従者がいつまでも寝ているわけにも行かない。 彼は身を起こした布団の上で、すぐに支度いたしますと声をかけた。 ☆  総勢、巫女百名を擁する由緒正しい神道家。それがこの、葛葉神道家だ。 興したのは彼の仕える姫君の義祖父で、通称を≪老翁≫。  すでに年齢は三千歳を超えるという怪人物である。  何度かその噂の真偽を尋ねているのだが、彼の姫君は是とも非とも言ってくれない。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加