第4章

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 男は彼が頭をあげたことに気づいて、両手で持っていた持笏から片手をはずし、自らの唇の前に指をおいて彼に声を出さぬようにと示してくる。  涼の乱れた髪を、ソッと指で背に流す、その表情は柔らかで、どこか楽しげだ。  彼の方へ向き直ると、片手で彼を手招く。 逆らい難くて膝行で男の前まで進んだ。  男は微笑んで、彼の手を開くように示してくる。 これもまたそのとおりにした。  と、男が笏の先で、彼の掌に触れる。 掌の上になにか暖かい重みが生じた。  見れば、3つの珠が載っている。驚いて顔をあげると、男はもう一度、同じ仕草で彼に声を出すことを禁じた。
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