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この葛葉神道家に、彼以外に男がいるとしたら、それは唯一人。
それも常に御簾の内においでで、そこからは出られないことになっている存在である。その声は、この館で知らぬ者は無い筈だ。
しかし、あの紋は意外だった。
いかにこの世界の素養がない彼でも、あの紋は知っている。
涼はこの事実を知っているのだろうか。
尋ねてみたい気もするが、それを口にした瞬間、彼は自分の息の根が止められてしまうだろう予感もしているのだ。
しかし……齢三千歳。
あの相手が、彼の考えた通りの人物であるのであるならば。
それもまた、あり得ないこともでもない、のかもしれない。
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