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めったにお目通りが適う相手ではないし、適ってもいつも御簾の向こうの方だ。
この老人の声以外、有坂は≪老翁≫について知ることはない。
齢三千歳……。
御簾の向こうを思うとモヤモヤする。
やくたいもない想像ばかりがふくらんでも益はない。仕事上必要のない情報なら、そも吹き込むのはやめて戴きたいとせつに願うところである。
それが夜明け前であろうが、スーツを着て、ネクタイを締めてしまえば、背筋は伸びる。身支度を整えると、障子の向こうに声をかけた。
「阿さん。お待たせいたしました。姫のところにご案内いただけますか?」
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