そして物語は始まった

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「ねぇ、俺を見て」  太い腕が俺の肩を捕まえて、身動きを取れないように固定される。智弘はそう言うと妖しく笑んだ。  元々顔立ちは整っていて、瑞々しい唇の下に生えた髭も、余計にセクシーに見せている。  ファッションなのだ、と本人は言っていて、単に剃るのが面倒なだけじゃないのか、と俺は思っていたが、強ち嘘では無さそう。 「…………離せよ」 「やだ。ちゅーしてくんないと離さない」 「ふ、ざ、け、る、な」 「ごふっ!!」  顔に似合わない事を言うな。  グイッと顔を近付けてくる智弘の腹に肘鉄をお見舞いする。鳩尾いったらしく口を梅干し食った感じですぼめている。  悪いが俺は蓮一筋だ。  他人に靡くつもりはない。 「用がそれだけなら帰るぞ」 「ぐっ…………でも、そういう冷たい所も、好き…………っ!!」 「キモい死ね」
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