348人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
いつも言われてる事は、ファンの人と深くかかわっちゃダメってこと。
ファンはファン。
上に行きたければちゃんとしろって。
それはすげーわかってる。
わかってるんだけど……、
さっきの声がものすごーっく寂しそうっていうかね。
心底聴きたかったーって言っててさ。
ホントは今日のチケット、完売だったんだけど。
なんかね。
せっかくそこまで聴きたいと思ってくれてるのに、はい、ダメでーすなんて言いたくなくてね。
その気持ちがお腹の中からわき上がって来てさ。
「あ、あのっ、チケット、ありますよ!」
思わず声、かけてしまった。
言ってから、後悔とこれでいいんだって気持ちが混ざった時。
振り返ったその人。
……うわーっ、すげーかわいい!いや、美人!
もしかして僕とそんなに変わらないのかな……。
「あ……ふふっ、ありがとう」
お礼を言われて慌てて首振った。
そ、そうだ、チケット!
「えっと、今、取ってきます!」
地下につながる階段に向かおうとしたら、その人が手で制した。
「ううん、ごめんなさい。本当は聴きたいんだけれど――」
最初のコメントを投稿しよう!