さくらの座敷童女

13/21
前へ
/256ページ
次へ
「小笠原 了と申します。みなさま以後、見知りおき下さい」 「これからは弟と共に、父を支えて参ります。ご指導の程、宜しくお願い致します」  そして二人、揃ってニッコリ。  並べて見ると、似てはいるがその笑い方からしてやっぱり二人は全くの別人だ。  それぞれの笑顔に、フロアは歓迎の拍手と娘たちの嬌声に溢れた。 「小笠原家にご子息がふたりいらした……? しかも……!」  うわごとのようにつぶやく淑子さまは、どこか興奮した様子で鼻の穴を膨らませている。  私とて、あまりの予想外な出来事に心臓がドキドキと鳴りっぱなしなのに、どうやらそんな事に了さんは構ってくれそうにない。 「さあ、俺は先に名乗ったぞ。お前の名前は?」  まだフロア中がこちらに注目しているのに、了さんは真っ直ぐ私にそんな質問をしてくる。 「し、四条、美春……です」 「みはる? 美しく晴れる、か?」 「い、いえ、美しい春です」 「ふうん……」  ニヤリとまた独特の笑い方をして、了さんは腕を組みながらソファに身を沈めた。 「……なにやってんだ、早くピ・ア・ノ。そっちのも、アンタはバイオリンだったな」 「は、はいっ」  真っ赤なお顔の淑子さまが弾かれたようにサロン中央へと向かう。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

292人が本棚に入れています
本棚に追加