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「極めつけはあれだ! なんで胸を突っつく必要がある!? それに大好きだなんて、僕だって言われた事ありませんけどね」
「あああ、もういいです! ごめんなさい、了さんにはどうしても気が緩むと言うか……」
その瞬間、京さんの瞳がニヤリと笑い、肩を引き寄せられて彼の唇が耳元に触れた。
「美春、×××××……」
(えっ……?)
囁かれた、想像を遥かに超える一言に心臓が飛び上がる。
そして京さんは私の手を取り、自分の胸元に押し付けた。
「……ほら、こんなに心から溢れてる。これからは毎日これを言うよ」
「わ……私も、あの、あの、あ……」
その先の言葉が、彼の唇で塞がれる。
(っ……!?)
大好きな想いを伝える最良の方法。
それは決してはしたない事でも、ふしだらな事でもない。
だって今、私の中は京さんの想いで溢れてる──。
「……淑女たる者、唇を許してしまってはもう選択肢はありませんね。……僕以外には」
意地悪な漆黒の瞳が、優しい三日月の弧を描く。
「……紳士たる者……責任、とってくださいね……」
「もちろん、そのつもりだ」
もう一度、今度はゆっくりと近づいてくる瞳。
私はぼんやりと夢の中にいるような心地で、自分から目を閉じてしまった。
三度目の春、約束の滝桜の下。
お嫁入り前なのに。
私は、京さん以外の人の花嫁にはなれないカラダになってしまいました──。
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