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エピローグ 〜そして桜たちは〜
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「いーのちー短しー♪……。恋ーせよ、乙女ー……♪」
満開の滝桜の下。
この季節になると、ついこんな流行歌を口ずさんでしまう。
「あ……私、その歌知ってますよ。お好きなんですか? 榮子さま」
「ええ、ええ……。よく一緒に歌いましたわねぇ美春さん……」
「え? は、はい。そうですね。歌いましたっけ……」
いつものように桜の下で車椅子を固定しながら、美春さんが笑ってくれる。
ああ、この人は本当に可愛らしくて、お優しい方。
「榮子さま、少し風が冷たくはありませんか? もう一つショールがありますから羽織りますか」
「いいえ。日差しが充分温かくて……今日は気分がいいわ」
膝の上には、大事な大事なわたくしの日記帳。
庭に出る時も部屋に居る時も、片時も離せない。
これを抱いていると、なせだか胸の中に優しい風が吹くから。
「そうですか……よかった。ほら、桜も今が見ごろですよ、すごく綺麗……」
そこへ、大股に裏庭の草を踏む音が聞こえてきた。
この歩き方は、若い頃の高之さんに良く似ているような気がする。
「やあ、榮子おばあさま。今日は顔色もいいですね」
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