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「は? ずっとはっきりした返事をくれないのはそんな理由!? はるみがこの仕事をしてたからこそ僕たちは知り合えて、君の人柄もわかって……! とにかく惚れてんだから、はるみとしか結婚なんかしない!」
「や、やだ、もうそんな、奥様に聞こえちゃうよ……!」
うふふ……。
ええ、耳をそばだてなくても聞こえましたよ……。
ねえ、滝桜にも聞こえましたわよね……?
「……あーつきー血しーおのー♪ 冷ーえぬー間にー……♪」
こうしてあなたは、幾度も恋人たちの約束を見てきたのね……。
そしてきっとこれからも……。
「絶対はるみに気後れなんかさせない。それに三井家の男は例外なく、死ぬまで妻にゾッコンって家系なんだぞ、どうだ!」
「どうだって……もう! わかったから、そんな大きな声を出さないで……!」
ああ……気持ちのいい風……。
目を閉じると、みなさんの顔が浮かびますわ。
楽しくて苦しくて、哀しかったあの頃が、この日記帳の頁をめくるように通り過ぎていきます……。
「……え、ホントに? じゃあこの場で、おばあさまに宣言してもいいか?」
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