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「うん……恥ずかしいけど、私も奥様に一番最初にご報告したいな。とても可愛がって頂いてるから」
ねえ、美春さん。
あなたは幸せでしたか……?
「あー……おばあさま、ちょっといいかな。……あれ? 寝てるのか」
「ううん、目をつぶってるだけよ。いつもこうなの。ほら、手が日記帳をめくってるでしょ? 榮子さま、少しだけお話してもいいですか……」
薄く目を開けると、うっすらと頬を染めた可愛らしい美春さんの笑顔。
後ろで陽炎のように、薄紅色の桜が揺れている。
「美春さん……。幸せ、だった? あなた……」
「え……?」
そう。
あなたはよくそうして、大きな目を真ん丸にしてわたくしを見たわね。
「いやだな、おばあさま。はるみ……じゃなくて、美春さんはこれから幸せになる……」
「……もちろんです、榮子さま。私は誰よりも幸せでした……」
まるで桜の花がほころぶように、美春さんがふんわりと微笑んだ。
「榮子さまだけに……内緒のお話。あの人、毎日欠かさず『あいしてる』って言ってくれてたんですよ。びっくりでしょう?」
幸せそうな笑顔に、一時期のような影はない。
それにしても……あの方がそんな事を……。
美春さんだから、だったのでしょうね。
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